音感トレーニング-3

最初の音が分からない…

さて、実際に音感トレーニングを始めると誰もがぶち当たる
第一関門」のお話です。

そもそも「最初の音が分からない⁉︎」というもの…
この時点で「やる気が失せる…」というか「取っ付きにくい」というか… そんな話はよく聞きます。

実はこれ、「相対音感」では当たり前の事で、基準となる音がないと判別は出来ない仕組みなのです。曲が鳴った瞬間に音を取るのはまず不可能で、しばらく聴いてから「調性」の中に入る… 音が判るのはそれからなんです。

なので、まず必要なのが「調性」の把握です。「メジャー」の曲なのか「マイナー」の曲なのか?
そして馴染みのあるフレーズはあるか? それは英語のヒアリングで分かるワードから意味を探るのと同じです。判別しやすいのは「曲の始まり」ではなく、むしろ「曲の終わり」だと思います。
これが「暗い響き」か「明るい響き」なのか? これを判断します。

曲全体で判断をすると、この「明るい・暗い」がけっこう不明瞭になる場合が有ります。
実際は「メジャーキー」の曲なのに「歌詞が悲しいから暗い曲」なんていうのもあったりして、
「明るい・暗い」と感じる尺度が、人によって曖昧だったりもするのです。
ちなみに、あの「大きな古時計」を「暗い曲だ」感じる子供はけっこういます。 
でも「メジャー」なんです… あの曲は… 確かに「明るい曲」じゃないですけどね。

なので、最後のフレーズから判断する方が的確かも知れません。
例えば「ミレドー」とか「レシドー」とか「」で終わる感じが強いのか、
「ドシラー」とか「シミラー」とか「」で終わる感じなのか?
また「和音で判断」というのも有りです。「ドミソ」がしっくりくるか「ラドミ」なのか?

実際に音感トレーニングをする場合も「始まりのフレーズ」よりもは「フレーズの終わりにフォーカス」した方が近道のような気がします。曲の始まり方って、それこそ「何でもアリ」なのでバリエーションが多すぎるのです。でも、曲の最後… 終わり方というのは「ある程度、定番フレーズ」に落ち着きやすい。これを「先にストック」しておいた方が「後々、楽になる」と思います。
「メジャーの終わり方」と「マイナーの終わり方」という感じで、定型パターンを分類しながらストックして置く… それらがやがて「馴染みのあるフレーズ」となって行きます。

「解答」を見まくる!

最初のうちは「ストックを増やす!」ことがテーマです。
なので、楽譜や楽器で音を調べるのは「全然OK!」です。
音の名前なんて考えて判るものでは有りません

「考えて答えが出る」のはある程度パターンが見えてからになります。中級レベルになれば「消去法」とか「比較・分類」とか「あの感じ…」とか、そんな音の取り方も出来てくるのですが、まずはその元となる「フレーズ(単語)」が必要になります。

特に最初の段階で「間違った名前(読み)」を覚えてしまわないように! ここは細心の注意が必要でしょう。後から修正するのってけっこう大変なので「迷ったら確認」です!

音感と同様に、とても重要な感覚がリズム感です。実はこれも基本的な能力として備わっている
言葉にも「リズム」があって、「ありがとうー」と「あーりがとう」とではリズムが違う。
この言い方ならピッチまで変わりそうですね… 

試しに「リズム感」を確かめる為の簡単なテストがあります。
とりあえず曲を鳴らしてみましょう… ごく普通の曲なら何でもOKです。
そして「1拍目と思うところで手を打つ」というシンプルな課題です。

これ、殆どの人が簡単にクリア出来ちゃうんです。不思議と何故か出来てしまう
そのまま「手拍子する」ことも「2拍目と4拍目だけを打ってみる」なんてことも…
はぼ練習無しで出来てしまう… これが「人間の基礎能力」たる所以です。

だからこそ音楽に反応できる、感動もできる。「音感」にしても「リズム感」にしても
普段は何気なく使っている能力… これを「意識して、自覚を持ってトレーニングする!
ただ「それだけのこと」がしたい訳です。

「定型パターン」を出してみた!

さっきの話で「フレーズの終わりにフォーカスした方が近道だ!」なんてことを言っていたので、実際に「フォーカス」してみました。

「黒本」(Jazz Standard Bible)をパラパラと開いてみて、フレーズの終わりに注目… 分類したのが次のレポートです。

・ 音数は3〜5つの短いフレーズ
・ 全て「移動ド読み」
・ 「メジャー系」と「マイナー系」に分類

《メジャー系》

  • シドーレドー
  • レドーシドー
  • ソファソミー
  • ソーファーミー
  • ソーシードー
  • ソードドー
  • ソーレードー
  • ソーレミドー
  • ソドーレドー
  • レーミードー
  • レーソードー
  • レーシードー
  • ミーレードー
  • ミーミードー
  • ミーソードー
  • ファーソーシドー
  • ファソラシドー
  • ファーラードドー
  • ファラミミドー
  • ファミレミドー
  • ファーシードー
  • ラーシードー
  • ラードーレドー

とりあえず、書き出してみたのですが…
まあ、このぐらいにしておきましょう。
けっこうあるやん…⁉︎」ってなりますよね。

ただ「規則性」はありそうです。
まず「ソ」で終わるパターンがない。「ソ」はドミナントの力が強いので「落ち着かない・終われない」のでしょう。
なので殆どが「ド」で終わります。「ミ」が少しありますが「例外」の範疇で考えていいと思います。

メジャーキーで一番終止感のある音が「ド=Root」なので、
こういうところから「メジャー / マイナー」を判別します。

後はリズムとオクターブですが、左のリストでは敢えてオクターブの指定をしませんでしたリズムも適当です。実際に音を出してみて「こんな感じも有りだな…」とか思いながら、自分勝手に「リズムとオクターブのバリエーションを考えてみる」というのも良いかと思います。

その中で「これ定番だな!」と思えるフレーズをどんどん増やして行けば、やがて単語が繋がって話ができます。ちなみに左リストの短いフレーズをほぼ記憶できたとしたら、それだけでもかなりのスキルアップになっている筈です。
曲中の色んな場面で「使える単語」となる訳です。

《マイナー系》

  • ドーレシラー
  • シードミラー
  • ドーシーラー
  • ミーシラー
  • ミドシラー
  • ミサーシラー
  • レーシサラー
  • ミーサーラー
  • シラソラー
  • レーシーラー
  • ファミソファミー
  • ソーラファミー
  • シーレドラー

さて「マイナー系」ですが… ちょっと少なくなりました。
「黒本」の中の割合でみても「マイナーキー」の曲って少ないんですね。後、移動ド読みで「」というのが混じっていますが、これは「ソ#(西塚式)」のことです。
文字で打つと「ソ」と「ラ」の間に「#」がきたりして「これどっちの音?」とかになりそうなので「西塚式」で表記しました。

それぞれに「マイナーっぽい味わい」がありますよね。

ここでも「ミ」で終わる例外パターンが有りますが、これは大抵「リピートする曲」の終わりでしたね。マイナーキーの「ミ」はまたドミナント色が強い音なので、次に繋げる意味合いとなるのでしょう。基本的には「ラ=Root」で終わっています。

こんな感じでフレーズを整理しておけば必ず「役に立つ日・使える日」が来ます。
今回リストアップした「短いフレーズ」だけでもかなり応用が効く筈です。
自分なりに「アレンジ」をしてストックして行けば「演奏の自由度」が格段に上がると思います。
もちろん「音感のスキル」も強化されるので「耳コピ」なんかもかなり楽になります。
あとは「コードも付けてバリエーション」なんて出来れば、もう「完璧!」ですよね…!

普通に喋れるなら「音痴ではない!」

「音感トレーニングはやっておいた方がいいよ!」的な話を始めると「いや、僕は音感無いから…」なんて反応をする人… けっこう多いのです。

実は言葉にも「音の高さ(ピッチ)」があって、「しゃべる」とは、この「音の操作を普段から無意識にやっている」ということです。またそれができるからこそ、方言が身についたり、誰かのモノマネをしたり、イントネーションがどうのこうの… とかそんな話ができる訳です。言葉を覚え、認識して、また再現するためには「音感」が欠かせない
なので、普通に喋れるなら「音感が無い」なんてことはありません!

色に名前がある」のと同じように「ごく普通の事」として「音の認識ができたなら」さぞ便利だろう… これが私の言う「音感トレーニング」です。音の名前が不明瞭だと「話し辛い」のは当然で、もちろん「音で会話をする」という場面ではかなりのハンディです。逆に、色に名前がなければ日常生活がかなりし難い… それと同じことなんです。

ではなぜ「僕は音感無いから…」となってしまうのか?

多分何処かで「音感の優れた人」を見たのでしょう…「できる人」を知ってしまった。
でもそれって「訓練したかどうかの違い」でしかないと思うのです。

「色の名前」だって訓練しましたよね、幼い頃から… 
色彩感覚と同じように「音感も普通に備わっている能力」つまり基礎能力です。
これを使って、音に「然るべき名前」を付ける… ただそれだけのことなのです。

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