見事なメロディー構成!
もう、50年ぐらい前の話になるんですね… 私が中学生の時に観た名作映画です。
これ本当に「名作」だと思いました。劇中に流れる楽曲も素晴らしく、中でも「私のお気に入り
(My Favorite Things)」なんかは、今でもカバーされまくっている名曲ですよね。
ジャズの演奏でも様々なプレーヤーが取り上げています。
そして「ドレミの歌」… 私が今回注目したのはのこっちの方なんですが、
音感トレーニング的にも、ちょっと見どころ満載なので紹介してみようかと思いました。
主人公のマリア(家庭教師)がトラップ家の子供たちに「歌を教える」というシーン…
「音楽のドレミを覚えましょう!」という場面で使われる、もうドンピシャの「神曲!」です。
作曲者「リチャード・ロジャース」のナイスジョブ! 今回はこの曲の「見事なメロディー構成」をアナライズしてみようと思います。
まず最初の「ドーレミードミードーミー」という歌い出しですが「音が3つだけ」のフレーズになっています。次が「レーミファファミレファー」という同じく「音が3つだけ」のフレーズ。
そして「ミーファソーミソーミーソー」と続く。これも「音が3つだけ」です。

この「音が3つのブロック」を1音ずつ上げて行き「ファーソララソファラー」まで同じパターンで続けます。リズムも2パターンの繰り返しで単調なのに盛り上がる!
「ドレミ」「レミファ」「ミファソ」「ファソラ」と、まさに「音階の基礎練習」という感じの歌い出し… そして、何とも可愛らしいメロディーと思いませんか⁉︎
そして「ソードレミファソラー」と続く。「5th」の音から始まって、いきなり「Root」に向かって完全5度下降。それから順次進行で6度上がって行くという「音階練習 = 応用編」に入ります。

これも「同じパターン」で1音ずつ「ブロック」を上げて行き…
「ラーレミファソラシー」「シーミファソラシドー」と繋げる。
最後に「ドシラファシソドー」といういかにも終わりらしいフレーズで締めます。
ところが「それだけ」では終わりません!
今の階名を「実際に鳴らして」聞いてみると… 「あれっ?」となる箇所が…
特に「シーミファソラシドー」の部分… 「これは違うぞ⁉︎」となりますよね。
「#」が抜けている? そうです… 本当は「ファとソが#している」のです。
そしてまたよーく聞くと、その前の「ラーレミファソラシー」も怪しい…
そうなんです、この中の「ファ」も実は「#」なんです。

「#」の有る無しを聴き比べると分かりますが「フレーズの流れ」が格段に違います。
このような「音楽的テクニック」も忍ばせてのニクイい作りになっている。
これは「音感トレーニングとしても最適なメソッド」だと思います。
こんな感じで「よく知っているメロディーに関連づけて音を覚える」ことが出来れば、
かなり進度も上がると思います。
ちなみにこの「ドレミの歌」… オリジナルキーは「B♭メジャー」なんです。
なので、英語の歌詞も「元々、移動ド読み」だったんですね…
コードとスケールもアナライズ
この曲も超有名な曲なので、色んなアレンジで演奏されていますが、
今回は「音楽的テクニック」のところにフォーカスしてお話ししようと思います。
とりあえずCメロの譜面です。

《 コード編 》
前半(上の2段)のコードは、シンプルな「T – D – T – SD」の流れになっています。
2段目の「CM7」は普通に「C」でも良いのですが、まあ「隠し味」ですね。
なので「 C – G7 – C – F 」という、いたって「真面目?」なコード進行です。
そして3段目から「音楽的テクニック」が発動されます。
まず「CからC7」という進行で「F」へ行くための「引力」を高めます。

また「C7」はダイアトニックコードではないので「別の解釈」になる…
「セカンダリードミナント」と解釈されるコードになりなす。
そして(F/E)のところはベースの流れに注目!ですね。
次の「D7」に向かって「F – E – D」とベースラインが降りて行く… ここがイイ!
その後も「同じ様なベースの動き」が出てきます。

行き着いた先の「D7」も「セカンダリードミナント」です。
この曲では、さっきの「C7」と今の「D7」、そして次に出てくる「E7」と3つのセカンダリードミナントが使われています。なので、その「引力の強さ」をダイアトニックコードと聞き比べてみるというのもオススメです。ジャズでもポップスでも頻繁に出てくるアナライズのポイントです。
さて、ここに来て「メロディーに変化」が生まれます。
さっきの「ファも#か?」という謎… これは「D7の3rdに音が変化した」と考えます。
そしてこの「ファ#」が、次に来る「G7」への「引力」を強めています。

再びベースライン「G – F」の下降が入って、今度は「E7」に向かう。
これも後に控える「Am7」へのセカンダリードミナントです。
「メロディックマイナースケール」の件は、後の「スケール編」でお話しします。
そして最後は「 F – G7 – C 」とシンプルに終わります。
《 スケール編 》
さて、今度はスケールもアナライズしてみようと思います。
例の「イドフリミエロ」のお話しです。
メロディーがシンプルなので、難解なジャズの曲で理解するより分かり易いかと思います。
まず「音が3つのブロックを1音ずつ上げて行き」というくだりです。
「ドレミ」「レミファ」「ミファソ」「ファソラ」と順に上がってゆくフレーズ…
最初のコードは「C」なので、とりあえずスケールは「アイオニアン」と見ます。
「ドーレミードミードーミー」のところまでです。

そして次の「レーミファファミレファー」ですが、音が1音上がっただけなので、
スケールも「ドリアン?」とかになりそうですがコード(Root)が違います。
なのでここは「G7:ミクソリディアン」と考えます。
ちなみにこのフレーズを「Dm7」の上で弾くのと「G7」とで比較してみてください。
ちょっと感じが変わるかと思います。それこそ「音の役割が変わる」という現象です。

こんな要領で「コードにスケールを対応させる」と考えやすくなります。
なので次の「ミーファソーミソーミーソー」では… また「C : アイオニアン」。
そして「ファーソララソファラー」は「 F : リディアン」と見ます。

さて、次からは少し難易度が上がりますが「面白いところ」でもあります。
「ソードレミファソラー」というフレーズ、ここでは「 C – C7 – F 」とコードが変化します。
なのでその通り解釈すると「ソード」と「レミファソ」と「ラー」に分割されてしまう…
最初は「C : アイオニアン」… 次が「C7」これは「Fメジャーキーの5度」のコードです。
なので「ミクソリディアン」… そして最後の「ラー」はコードFの3rdです。

さあこの解釈が「適切か?」となると、あまりキレイな解釈とは思えません。
これは普通に「ソードレミファソまでを一つ」と考えて「アイオニアンと見て良い」と思います。
そして最後の「ラー」だけはコードFの3rdと考えます。
次に続く「ラーレミフィソラシー」のところ。
これは「フィ=ファ#」が入っているのでダイアトニックスケールではありません。
この「D7」はセカンダリードミナントですが、Cメジャーキー本来のドミナント「G7」に向かうためのドミナントなので「ダブル(ドッペル)ドミナント」なんて言われ方もするようですね。
この場合は「D7:ミクソリディアン」と見ます。そして最後の「シー」はG7の3rdですね。

そして「E7」になったところで「ファとソにも#がつく」…
これは「Aマイナーキー」の「メロディックマイナースケール」と呼ばれるスケールになります。
字面だけで見るとイカツイ感じもしますが、音にすると「滑らかで自然な流れ」になる…
この音の流れこそが「メロディック」と呼ばれる所以でしょう。
とまあこんな感じで、様々な音楽的テクニックがふんだんに盛り込まれている訳です。
また、それなのに「自然な感じ」というのが更に良いですね!
さりげなく、そして「然るべくして」使われている技術が素晴らしい…‼︎
と、「ひどく感動した」のでした。
そんな訳で… 長々と解説をしてしまった…
という次第です。
