ドミナントモーション-1

緊張状態

普通に曲を流していて「ドミナント」が出たところで、いきなり曲を止められたら「気持ち悪い」ですよね。また「曲の終わりがドミナント」というのもほぼ有りません。「謎解き」をせずに終わる推理ドラマみたいに「おい、おい…」となります… さて、この音楽的な感覚は何なのか?

以前に「音楽は緊張と緩和の繰り返し…」なんて話をしていましたが、この「緊張状態」こそが「ドミナントモーション」であります。アドリブをする場面でも、アナライズをする時にでも無くてはならない「知識・概念」になりますね。

これちょっと「奥が深い」のですが「ジャズをやるには必要不可欠」こればっかりは避けては通れないので、今回は「ドミナントモーション」のお話… その「第一話」です。

「ドミナントモーション」の話になると「解決する」とか「着地する」とか、そういった表現がよく使われます。これは緊張状態が緩和される瞬間の感覚を言っている訳ですが、その重要なキーノートとなるのが「トライトーン」ですね… 「ドミナント7thの要」となる主要メンバーです。 

通常、「ドミナント」は「トニック」に向かおうとする… これを「音の引力によるもの」と考えればトライトーンは、その「引力を強く持つ2つの音」という解釈になります。
クラシック音楽でも「シ」の音は「導音」と呼ばれていて、まさに「導く音」とされています。
「導く」というか「引き寄せる」というか、とにかく「力を持った音」として扱われます。

また「半音の流れで次の音に向かう」というのもポイントです。
「シ(G7 : 3rd)」は半音上の「ド(C : Root)」へ…
「ファ(G7 : 7th)」は半音下の「ミ(C : 3rd)」へと「半音進行で向かおう」とする… 
そして「解決着地」をする… 緊張が緩和される…

更に、この2つの音(ファ・シ)を和音にすると「不協和音」とされる響きになります。
これも「緊張感を高めている」要因になりますね。

そもそも「トライトーン」の「トライ」とは「3つ」を表している… トライアングルのトライと同じですね。日本語訳では、全音が3つで「3全音」となっています。そしてこれが「増4度」となる音程です。これを転回させて「減5度」としても「同じくトライトーンと解釈」します。どちらも「不安定・不協和」な響きで「悪魔の音程」なんて言われた時代もあったとか… 現代では「普通に使える不協和音」となっています。

つまり、さっきの「気持ち悪い」という感覚は、この「引力」が行き場を失った事による違和感だと言えそうです。

ツーファイブ


ドミナントコードを2つに分けて「 Ⅱ – Ⅴ 」とする… 
この手法は「もう至る所に登場」します。

かの有名な「オータムリーブス(枯葉)」なんかは「ツーファイブのオンパレード」みたいな曲なので、ジャズの教則本では「練習の必須科目」となっていますよね。
確かに「スムーズ」な音の流れだし、また「オシャレ」な響きでも有ります。

私も「iReal Pro」に「ツーファイブのサークル」を作って、かなり練習をしました。中でも「為になった」と思えるコード進行をご紹介しておきます。

このコード進行は、よくある「転調しながらキレイに繋がる」進行なので、
何周トライしても飽きないというオススメのパターンです。
また「トランスポーズの練習にも打って付け」なので試してみてください。

ただこの進行だけでは、1周しても「キーは6つしか通らない」ので、
更に「キー設定」で半音上げた(もしくは半音下げた)バージョンも練習します。
これで「12キー」全てを網羅できます。

マイナーのツーファイブ

さっき「枯葉」は、「ツーファイブのオンパレードみたいな曲」なんて話をしていましたが、この曲って実は「マイナーキー」なんですね。でも特に曲の出だしなんかは「あまりマイナーぽくない」ですよね?「B♭M7」に向かう「ツーファイブ」から始まって「E♭M7」のところまでは… そして次の「Am7♭5」が出ると急に「マイナー」っぽくなる。
この感じこそが「マイナーのツーファイブ」です。

決めては「◯m7♭5〜◯7th」というコード進行で、このコードネームを見たら、ほぼ「マイナーへ行くかな⁉︎」と思ってOK! でしょう…

この「マイナーっぽい」という現象は「マイナースケールの音使い」によるものですが、
最初の4小節間は、コード進行だけでみると「B♭メジャー」の流れです。
なので、マイナースケールの色合いをあまり感じません
そして「Am7♭5」が出ると、「平行調」となる「Gマイナー」の音使いになる…
また次に続く「D7」が「Gm」のドミナントコードなのでマイナーへの引力を発動します。
これが「マイナーっぽくなる」という現象のカラクリです。

「メジャー系」と「マイナー系」のドミナント


さて、さっきのは「平行調」に移行する流れなのでダイアトニックスケールは同じです。
なので「音使いの基本」は変わりません。ですが「Cメジャー 〜 Cマイナー」のように
同主調」に移行(転調)するという流れだって有ります。

この場合は「調号が変わるので「スケールの音使い」も変わります
ところが「マイナーキー」には3つのスケールがカテゴライズされている…
・ナチュラルマイナースケール
・ハーモニックマイナースケール

・メロディックマイナースケール

この中のナチュラルマイナースケール以外では「シの音が導音として設定」されます。
なので「Cマイナーキー」の「シ」に調号のフラットは無く「ナチュラルのシ」となります。
こうなるとドミナント7th(G7)は「メジャーとマイナー」で同じになるんですね。

そしてこのドミナント7thで使えるとされるスケールは数多く存在します
しかし、その中には「マイナーでは合わないスケール」というのも有ったりするので厄介です。
これを「メジャー系ドミナント」と「マイナー系ドミナント」とに分けて考える場合も有る様なので、ちょっとアナライズしておきましょう。

「メジャーとマイナー」では、このように基準となる音のメンバーが変わってきます。

例えば「G7の13th:ミ」ですが、この音は特に要注意!ですね… 
「ミ」は「メジャーとマイナーとを別ける要の音」なのでマイナーキーの世界では場違いです。
また「9th:ラ」もマイナーキーで使うと違和感が有る… 
これは「調号」と照らし合わせても分かりますね。「マイナースケール」には無い音です。

この考え方を反映しているコードが「◯m7♭5」です。

構成音となる「レファラド」の「ラ(5th)」は、調号によって「♭」となるので「♭5」です。

さっきの話に繋げると、その次に来るであろうドミナント7thに「13th」や「9th」のテンションはほぼ付かない… 付くとすれば「♭13th」や「♭9th」になる筈です。
これが「マイナー系ドミナント」の考え方です。

なので「マイナーへ行くかな⁉︎」と思った時には「マイナー系ドミナント」は考慮すべきですね。
私の場合、「空気読めない」系のちょっと恥ずかしい音使いになってしまった時の多くは、
ほぼこれ」でしたね… コードネームだけに反応しているとそんなハメになります… 
実際に音を出してみると本当によく分かります。

アドリブはまさに「即興」なので、瞬時の判断がフレーズに現れます。
ビギナーから中級レベルぐらいになると、変に知識も増えてきて逆に混乱したりしますね…
ジャズって、ホント頭使います… そこがまた「面白い」のですが…

実は他にも「ドミナントモーション」には、色んなバリエーションが存在します。
なので「奥が深い」となる訳ですが、これはまた「続編で…」ということに。

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